近年、高齢化が進む中、さらなる医療の充実化が求められている。また政府は、従来、病院完結型であった医療体制を地域完結型へと移行する方針を掲げている。そうした中注目されているのが、「スマート医療」である。スマート医療とは、ITを駆使して診療や治療、手術等を行う医療体制である。
名古屋大学医学部付属病院は、シスコシステムズとともに「スマートホスピタル構想」に向けた医療IoTの実証実験を進めている。例えば、自宅や介護施設等の患者にウェアラブルデバイスを装着し、バイタルサインや運動量などのデータをリアルタイムに取得、それに基づき患者への生活指導を行う(日経新聞、2018年2月13日)。
AMED(日本医療研究開発機構)は、2018年7月、信州大学でIoTを活用した「スマート治療室」の臨床研究を開始すると発表した。手術室内の各種の医療機器をネットワークに接続し、ミドルウェア*を通じてデータ連携を可能にする。またこれにより、手術の途中で手術室の外にいる医師からアドバイスを受けることも可能となる(日経新聞、2018年7月10日)。
日本の少子高齢化傾向は今後も変わらず、2025年には全人口の約2割が後期高齢者になる時代を迎える。高まる医療需要と相対的な医師不足に対応する有効手段として、スマート医療の急速な普及が期待されている。
*ミドルウェア:アプリケーションとOS(オペレーティングシステム)の中間的な処理を担うソフトウェア。