2018年7月30日月曜日

「ホワイトスペース戦略」の可能性

ホワイトスペースの定義


近年、少子高齢化や人口減少の進展等を背景に、消費の先細りが懸念されている。

そこで、新たな需要を求めてコアビジネスに隣接した新たな事業分野に乗り出す企業が出てきた。
このようにコアビジネスと隣接した領域で自社の独自の強みを活かし新たなビジネスモデルを確立しようとする戦略をマーク・ジョンソン(米コンサルティング会社、イノサイト会長)は「ホワイトスペース戦略」と呼んでいる。



ジョンソンはホワイトスペース戦略の成功事例として、アップル社を上げている。

同社は、PCの売り上げの低迷を打開する策として、デジタル音楽端末iPodの投入を行った。それだけでなく、音楽をCDではなくネット上のストアを通じてダウンロード販売するという手法を開発した。これは、同社のITとインターネットを融合させた画期的なビジネスモデルであった。

アップルは、自社のコアビジネスの需要が低迷したときにホワイトスペース戦略を断行した。ホワイトスペース戦略は、未知の領域への進出であるため、企業はそれなりに大きなリスクを取らなければならないが、成功すれば莫大な利益がもたらされる点に魅力がある。


ホワイトスペースの事例


以下、ホワイトスペース戦略の成功事例をあげてみよう。

富士フィルムは、フィルム製造で培った技術を基礎化粧品の分野に活かし、「アスタリフト」などのヒット商品を作り続けている。

スキンケアの成分として有効なコラーゲンは、カラー写真フィルムの原料にも使われる。そのため、同社には莫大な量のコラーゲン研究データが蓄積されているし、肌への美容成分の浸透に関しても独自の強みを持っているので、基礎化粧品分野への進出が成功したと言える。

また、ヤマダ電機やエディオンといった家電量販店大手が、数年前からリフォーム業界に参入している。キッチンやトイレ、バスなどのリフォームを行う際、家電製品も買い替えることが多く、当然、家電量販店として培ってきたノウハウも活かせる。

各社の進出時期は異なるが、いずれもコアビジネス(中核事業)の需要に陰りが見え始めたときに着手している。また、単に異なる領域に進出するというだけでなく、自社のコアビジネスで培った技術やノウハウを活かしている点でも共通している。

まとめ

現代は、消費者ニーズの多様化が進み、ビジネス環境の変化もめまぐるしい。

そのため、企業としては、コアビジネスのみに固執していては安定的な経営ができなくなることも十分考えられる。

世界経済が混とんとし、流動化するほど、今後、多くの企業において、独自のホワイトスペースを模索し、画期的な戦略を断行する機運が高まるものとみられる。