最近、学生と常識問題の勉強をしていた時
のことである。
学生が、ここに「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」
ということわざがあるけど、別のところでは、
「君子危うきに近寄らず」ということわざも
あったんです。これって、矛盾してないっすか?」
と尋ねてきた。
ことわざって、世の中の真理を表しているはずなのに、
矛盾している内容が結構多いことにちょっと戸惑って
いる様子。
そこでボクは、「物事にはいろいろな背景とか、条件
とか、前提があるから、一概に矛盾しているとは
言えないんだよ」と前置きしたうえで、
「君の取り上げた2つのことわざはの矛盾は、
リスクとベネフィットを考えれば解消できるんじゃないかな」
と答え、「たとえば…」と続けた。
「たとえば…、『虎穴に入らずんば、虎児を得ず』は、
リスクが比較的小さくて、実行すれば大きなベネフィットが
得られる場合には真理となりうるけど、もし、得られる
ベネフィットがほとんど不明なのに、リスクだけが明らかに
大きい場合は、『君子危うきに近寄らず』のほうが
真理に近くなるんじゃないか」と説明した。
彼の言うように、確かに世の中には一見矛盾しているような
ことわざも少なくない。
「二兎を追うものは、一兎をも得ず」
VS
「一石二鳥」
「案ずるより産むが易し」
VS
「石橋をたたいて渡る」
などなど。
それぞれに物事の真理の一面を突いていることは確かである。
しかし、それぞれ背景とか、条件とか、前提などが違うので、
このことわざは正しくて、あのことわざは間違っているとは
言えないはずだ。
ところで、このような質問を学生から受けたことで、
ボクの中に小さな危惧が生まれた。
新聞やテレビの報道などで、ワンフレーズ的に語られている
ことを短絡的に理解する若者が増えているのではないか、
という危惧である。
ワンフレーズの裏には、いろんな背景とか、条件とか、
前提がある。
そこを見極めないで、簡単に批判したり、鵜呑みにしたりは
してはいないだろうか。
明日は参議院選挙だ。
各政党のワンフレーズ的な主張を短絡的に解釈するのではなく、
その背景とか、条件とか、前提などをしっかりと見定めて投票
する候補者や政党を判断してもらいたいものである。
ともあれ、若者は自らの権利である選挙権を行使することなく、
自分たちの未来を他人任せにすることのないようにしてもらいたい
ものだ。
若者よ、選挙へ行こう!