先日、麻生副総理が「憲法改正はナチスの手口に学んだらどうか」
という驚くべき発言をして、欧米のみならず中韓からの反発を
買ってしまった。
外務大臣、財務大臣、そして総理大臣まで歴任した人物に
あるまじき大失態と言わざるを得ない。
ところで、政治家に限らず、日本人はなぜ、いとも簡単に
このようなヒトラーやナチスに関する失言を繰り返すのだろうか。
私は、下記の2つの理由があると思う。
理由1、日独伊三国同盟の影響
日本人の心の奥底にはナチスドイツは同盟国との意識が
根強く残っている。
欧米では、ヒトラーやナチスは敵という範疇ではなく、
むしろ「悪魔」という範疇に属する存在である。
理由2、ホロコーストはナチスだけがやったのではないという意識
欧米でヒットラーやナチスが嫌悪される最大の理由は、
言うまでもなくアウシュビッツでのホロコースト
(ユダヤ人大量大虐殺)にある。
もちろん、日本人もそのホロコーストには嫌悪感を抱いては
いるが、日本人の心中には、それを嫌悪する欧米連合国側が
投下した原爆によるジェノサイド(大量殺戮)もホロコーストと
大差ないとの潜在的な認識があるのかもしれない。
欧米では、原爆投下は大日本帝国の軍国主義という分厚く
堅牢な岩盤を打ち砕くために必要な措置だったとの認識もある。
一方、日本人にとっては善良な市民に対する大量無差別殺人以外
の何物でもない。
しかし、ホロコーストも原爆投下も戦争という途方もない
「人類の過ち」の一部として処理する傾向があることも
否定できない。
こうした2つの理由により、ヒットラーやナチスという
言葉の使用に関して、日本人と欧米とはその受け止め方に
大きな違いが生まれていると考えられる。
しかし、日本人のこうした考え方は国際社会では一切通用しない
ことに留意すべきである。
今回の麻生失言は、東京でのオリンピック開催を妨げる
可能性すらないとはいえまい。
いずれにしても、財務大臣として、また副総理として
外交にも密接なかかわりを持つ人物のこうした安易な発言が、
今後とも日本の国益を大きく損ねる可能性があることは
言うまでもない。
また、とりわけ中韓に「日本は正しい歴史認識を持たない国」という
批判の材料を提供し、今後の交渉において付け入る隙を与えて
しまったことも非常に残念というほかない。